プロンプトエンジニアリングは、AI開発において最も費用対効果の高い最適化手法です。モデルの微調整と比較して、リソース要求が低く、コストが安く、反復が速いという特徴があります。
Anthropicが社内で使用しているプロンプト技術を公式に公開しました。主にClaude向けに設計されていますが、ほとんどの技術は他のLLMにも応用可能です。
本記事では、Anthropic公式が推奨する12のプロンプトエンジニアリング技術を、実践的な視点から解説します。API開発においても、これらの技術を活用することで、AIとの連携効率を大幅に向上させることができます。

Claude 4を使いこなすための4つの基本原則
最新のClaude 4モデルに対して、Anthropicは特に4つの基本原則を強調しています:
1. 明確に指示する(Be Explicit)
Claude 4は創造的な拡張者というよりも、正確な実行者です。「期待を超える」パフォーマンスが必要な場合は、明確に要求する必要があります。
曖昧な指示ではなく、具体的な要件を伝えることで、AIの出力品質が劇的に向上します。
2. コンテキストを提供する(Add Context)
指示の背後にある理由を説明すると効果的です。例えば「省略記号を使わないでください」ではなく「音声で読み上げるため、省略記号を使わないでください」と伝えることで、Claude 4はより適切に対応します。
3. 例示に注意する(Vigilant with Examples)
Claude 4は細部まで注意深く観察し、提供された例から学習します。質の高い例を提供することで、出力の正確性と一貫性が大幅に向上します。
4. 積極的に指導する(Tell What TO Do)
「マークダウンを使わないで」ではなく「流暢な段落で回答してください」と伝えるほうが効果的です。何をしないかより、何をすべきかを明確に指示しましょう。
優先順位で並べた12の核心テクニック
実践的な効果が高い順に、12のテクニックを紹介します。
1. プロンプトジェネレーターを活用する
Anthropic Consoleのプロンプトジェネレーターは、効率的なプロンプト作成をサポートします。
プロンプト草案がない場合は、直接Anthropic Consoleのプロンプトジェネレーターから始めることをお勧めします。タスクの概要を伝えるだけで、適切なプロンプトを提案してくれます。
活用シーン:
- 新規プロジェクトの立ち上げ時
- 既存プロンプトの最適化
- ベストプラクティスの学習
2. 明確かつ直接的に指示する
Anthropicには黄金法則があります:プロンプトを同僚に見せてみて、特にその業務に詳しくない人に。もし彼らが混乱するなら、Claudeも混乱します。
効果的な指示のポイント:
- コンテキスト情報を提供:タスクの目的、対象読者、ワークフロー内の位置、成功基準
- 要件を具体的に述べる:コードのみが必要なら「コードのみを出力し、他の内容は含めないでください」と明確に指示
- ステップバイステップで指導:番号付きリストや箇条書きを使用して、要求通りに実行されるようにする
実際の例を比較:
曖昧な指示:
このお客様フィードバックから個人情報を削除してください
明確な指示:
四半期レビュー用にお客様フィードバックを匿名化するタスクです。
1. すべての顧客名を「CUSTOMER_[ID]」に置き換える(例:「田中さん」→「CUSTOMER_001」)
2. メールアドレスを「EMAIL_[ID]@example.com」に置き換える
3. 電話番号を「PHONE_[ID]」に修正する
4. 具体的な製品名が言及されている場合は、そのまま保持する
5. 個人情報がない場合は、そのままコピーする
6. 処理後の情報のみを出力し、「---」で区切る
明確な指示により、処理の正確性が大幅に向上します。
3. 複数の例を使ったプロンプト(マルチショットプロンプティング)
いくつかの丁寧に作られた例を提供することで、AIの出力の正確性、一貫性、品質を大幅に向上させることができます。
なぜ例示が効果的なのか?
- 正確性:指示の誤解を減らせる
- 一貫性:統一された構造とスタイルを確保できる
- パフォーマンス:厳選された例はClaudeの複雑なタスク処理能力を向上させる
効果的な例を作るポイント:
- 関連性:例は実際のユースケースを反映すべき
- 多様性:境界ケースや潜在的な課題をカバーし、AIが予期しないパターンを学ばないようにする
- 明確性:
<example>タグでラップする(複数の例は<examples>タグでネスト)
ベストプラクティス:3〜5個の多様で関連性のある例を含めること。例が多いほど、複雑なタスクのパフォーマンスが向上します。
Claudeに例の質を評価してもらったり、初期の例に基づいてより多くのサンプルを生成してもらうこともできます。
4. AIに考えさせる(思考の連鎖)
複雑なタスクでは、AIに推論プロセスを示すよう明示的に要求しましょう。「一歩ずつ考えていきましょう」という一文を追加するだけで、品質が大幅に向上します。
思考の連鎖を使うタイミング:
- 複雑な数学計算、多段階分析、複雑な文書作成
- 複数の要因が関わる意思決定
- 人間が考える必要があるようなタスク全般
3つの思考連鎖メソッド:
基本メソッド: 単純に「一歩ずつ考える」を追加
この投資提案を分析してください。一歩ずつ考えてください。
ガイド付きメソッド: 思考ステップを明確にする
投資提案を分析してください。まずリスク要因を考慮し、次に収益ポテンシャルを評価し、最後にアドバイスを提供してください。
構造化メソッド: XMLタグを使って思考と回答を分離
投資提案を分析してください。<thinking>タグ内で考え、<answer>タグ内で最終的なアドバイスを提供してください。
重要ポイント: Claudeに思考プロセスを出力させなければ、本当の意味で考えません。
5. XMLタグを使用する
XMLタグはプロンプトエンジニアリングで最も過小評価されているけれど、非常に効果的なテクニックです。プロンプトに複数のコンポーネント(コンテキスト、指示、例など)が含まれている場合、XMLタグを使うとClaudeが正確に解析でき、出力品質が大幅に向上します。
なぜXMLタグを使うべきか?
- 明確さ:プロンプトの異なる部分を明確に分離し、構造を良くする
- 正確性:Claudeがプロンプト内容を誤解するエラーを減らす
- 柔軟性:プロンプト全体を書き直すことなく、内容の追加・削除・変更・クエリが簡単
- 解析可能性:Claudeに出力でタグを使わせることで、特定の部分を後処理しやすくなる
ベストプラクティス:
- 一貫性を保つ:プロンプト全体で同じタグ名を使用する
- ネスト使用:階層的内容には
<outer><inner></inner></outer>構造を使用 - セマンティックな命名:タグ名は内容に合わせる(例:
<instructions>、<example>、<data>)
実際の効果比較:
タグなし(効果が低い):
このソフトウェアライセンス契約のリスクを分析してください:{{契約内容}}。補償、責任制限、知的財産権条項に焦点を当ててください。これは当社の標準契約です:{{標準契約}}。分析結果とアドバイスを提供してください。
タグあり(効果が高い):
ソフトウェアライセンス契約の法的リスクを分析してください。
<agreement>
{{契約内容}}
</agreement>
<standard_contract>{{標準契約}}</standard_contract>
<instructions>
1. 条項を分析:補償、責任制限、知的財産権
2. 異常な条項をマークする
3. 標準契約と比較する
4. <findings>タグ内で発見事項をまとめる
5. <recommendations>タグ内でアドバイスをリストアップする
</instructions>
高度なテクニック: XMLタグを他の方法と組み合わせて使用する。例えば、<examples>をマルチショットプロンプティングと、<thinking>と<answer>を思考連鎖と組み合わせて、超構造化された高性能プロンプトを作成できます。
6. AIに役割を割り当てる(システムプロンプト)
正しい役割設定により、Claudeを汎用アシスタントから専門分野のエキスパートに変えることができます。
なぜ役割プロンプトが効果的なのか?
- 精度の向上:法的分析や財務モデリングなどの複雑なシナリオでパフォーマンスが大幅に向上
- トーンの調整:CFOの簡潔さやコピーライターの文才など、役割プロンプトでコミュニケーションスタイルを調整できる
- フォーカスの最適化:役割コンテキストを設定することで、Claudeが特定のニーズにより集中できる
具体的な実装方法:
system="あなたはFortune 500企業のシニアデータサイエンティストです"
役割設定のコツ:さまざまな役割を試してみましょう。同じデータセットでも、「データサイエンティスト」と「マーケティング戦略家」では異なる洞察が得られます。
7. 回答を事前入力する(Claudeの応答をプリフィル)
これはClaudeだけの強力な機能で、Assistantメッセージに冒頭テキストを事前に入力することで回答の方向性を導きます。このテクニックは出力フォーマットに直接影響し、冗長な前置きをスキップし、AIが役割の一貫性を保つのにも役立ちます。
コア原理:APIコールのmessages配列に「assistant」ロールのメッセージを追加すると、Claudeはこの事前入力内容から続けて生成します。
重要な制限: 事前入力内容の末尾にスペースがあるとエラーになります。拡張思考モードではサポートされていません。
2つの実用的なシナリオ
1. フォーマット制御と前置きのスキップ
{を事前入力すると、Claudeが直接JSONを出力するよう強制でき、無駄な説明をスキップできます。
事前入力なしの場合:
「これはJSON形式の抽出情報です:`json{...}`製品説明から以下の詳細情報を抽出しました...」
{を事前入力すると:
"name": "SmartHome Mini",
"size": "5 inches wide",
"price": "$49.99",
"colors": ["black", "white"]
}
2. ロールプレイの一貫性
長い対話では、[役割名]を事前入力することで、Claudeが役割から外れるのを防げます。
8. 複雑なプロンプトを連鎖させる
複雑なタスクを単一のプロンプトに詰め込むと、Claudeはステップを見落としがちです。プロンプトチェーニングは、複雑なタスクを管理可能なサブタスクに分解する方法です。
主な利点:
- 正確性 - 各サブタスクがClaudeの完全な注目を集める
- 明確さ - シンプルなサブタスクはより明確な指示と出力を意味する
- 追跡可能性 - チェーン内の問題を特定して修正しやすい
使用シナリオ:
- 研究の統合、文書分析、反復的なコンテンツ作成
- 複数の変換、引用、指示を含むタスク
実装方法:
- サブタスクを識別する - タスクを異なる連続したステップに分解する
- XMLタグで構造化する - XMLタグを使用してプロンプト間で出力を渡す
- 単一タスク目標 - 各サブタスクは単一で明確な目標を持つべき
- 反復的に最適化する - Claudeのパフォーマンスに基づいてサブタスクを最適化する
典型的なワークフロー:
- コンテンツ作成:研究 → アウトライン → ドラフト → 編集 → フォーマット
- データ処理:抽出 → 変換 → 分析 → 可視化
- 意思決定:情報収集 → オプションリスト → 各項目分析 → 推奨
高度なテクニック:自己修正チェーンをサポート - Claudeに自分の作業をレビューさせる、特にハイリスクタスクに適しています。
9. 長文テキスト処理のコツ
大量のテキストを処理する際の特別な戦略で、重要な情報が見落とされないようにします。
Claudeの20万トークン長文テキスト能力に対して、Anthropicは3つの核心的なコツを提供しています:
長文書をトップに配置
2万トークン以上の長文書をプロンプトの先頭に配置し、クエリと指示を末尾に置きます。テストによると、これにより回答品質が30%向上します。
XMLタグで複数文書を構造化
<document>、<document_content>、<source>などのタグで複数の文書をラップし、Claudeが文書構造をより理解しやすくします。
まず引用してから分析
Claudeにまず長文書から関連部分を引用させてから、タスクを実行させます。これにより、情報の海の中で重要な内容に集中できます。
10. プロンプトテンプレートを使用する
再利用可能なテンプレートを構築し、一度書いて繰り返し使用します。効率向上の鍵です。
これはコンテンツを2つの部分に分けます:固定コンテンツ(静的指示)と変数コンテンツ(ユーザー入力、検索コンテンツなどの動的要素)。Anthropic Consoleでは{{二重括弧}}で変数をマークします。
主な利点
- 一貫性:プロンプト構造を統一して保つ
- 効率性:変数コンテンツを素早く置き換えられる
- テスト可能性:異なる入力を簡単にテストできる
- バージョン管理:固定部分と動的部分を分離できる
使用原則
プロンプトの任意の部分を繰り返し使用する必要がある場合はテンプレートを使用します。現在はAPIとAnthropic Consoleのみサポートしています。
例:
この英語テキストを日本語に翻訳してください: {{text}}
この単純な機能は、保守可能なAIアプリケーションを構築するための基盤であり、特に大量の繰り返し呼び出しが必要なシナリオに適しています。
11. プロンプト改善ツール
Anthropicは既存のプロンプトを最適化するための専用ツールも提供しています。複雑なタスクでは、このツールの提案が非常に役立ちます。
12. 拡張思考プロンプトのコツ
Claudeの拡張思考機能により、AIは複雑な問題を段階的に処理し、困難なタスクのパフォーマンスを大幅に向上させます。
技術ポイント
- 思考トークンは最低1024個、最小予算から徐々に増やすことをお勧めします
- 32Kを超える場合はバッチ処理でタイムアウトを避ける
- 英語での思考が最も効果的、出力はどの言語でも可能
核心テクニック
一般的な指示は詳細なステップよりも優れている
「ステップ1で変数を識別し、ステップ2で方程式を立てる」ではなく、「この問題を徹底的に考え、複数の方法を検討し、完全な推論を示してください」と指示しましょう。
複数の例と組み合わせる
<thinking>タグで思考パターンを示すと、AIは正式な拡張思考にそれを一般化します。
自己検証
AIにタスク完了前に作業を検証させ、プログラミングタスクでは思考内でテストケースを実行するよう要求します。
適用シナリオ
- 複雑なSTEM問題:専門知識と論理的推論が必要
- 制約最適化:複数の競合要件を同時に満たす
- 構造化フレームワーク:複数の分析方法をステップバイステップで適用
拡張思考はより多くの出力のためではなく、AIにより多くの推論空間を提供し、より高品質なソリューションを提供するためのものです。
高度な最適化テクニック
並列ツール呼び出し
Claude 4の場合、この文を追加すると並列実行の成功率が100%近くまで向上します:
最大効率のために、複数の独立した操作が必要な場合は、関連するすべてのツールを同時に呼び出してください。
フロントエンドコード生成
「保守的にならず、全力を尽くしてください」などの励ましの言葉を使うと、Claude 4がより複雑なフロントエンドコードを生成します。
ハードコーディングを避ける
「テストケースだけでなく、汎用的なソリューションを実装してください」と明確に要求します。
API開発におけるプロンプトエンジニアリングの活用
これらのプロンプトエンジニアリング技術は、API開発においても非常に有効です。特にAI機能を統合したAPIを開発する際、適切なプロンプト設計により、API応答の品質と一貫性を大幅に向上させることができます。
Apidogとの連携
Apidogを使用すれば、これらのプロンプトエンジニアリング技術をAPI統合にも応用できます。Claudeなどの大規模言語モデルAPIをテストする際、Apidogの直感的なインターフェースとプロンプトテンプレート機能で、効率的にAI応答を最適化できます。
主な活用シーン:
- AI APIのレスポンス品質テスト
- プロンプトテンプレートの管理と再利用
- 異なるプロンプトパターンのA/Bテスト
- API統合ワークフローの自動化
複雑なAI APIワークフローも、Apidogを使えば簡単に構築可能です。
Apidogなら、美しいAPIドキュメントを自動生成するだけでなく、Postmanをより手頃な価格で置き換えることもできます。
オールインワンの開発体験を、ぜひお試しください。

まとめ
Anthropicが公開した12のプロンプトエンジニアリング技術は、Claude 4の性能を最大限に引き出すための実践的なガイドです。
特に重要なポイント:
- 明確で具体的な指示を心がける
- XMLタグで構造化されたプロンプトを作成する
- 思考の連鎖で複雑なタスクに対応する
- 適切な役割設定でAIの専門性を高める
これらの技術を組み合わせることで、AIの出力品質を劇的に向上させることができます。API開発においても、これらのベストプラクティスを活用することで、より効率的で高品質なAI統合を実現できます。
プロンプトエンジニアリングは、まだ発展途上の分野です。今後もAnthropicや他のAI企業がより洗練されたテクニックを開発していくでしょう。これらのベストプラクティスを学び、実践し、共有することで、AIツールの可能性を最大限に引き出すことができます。



